大切な事はマッチング

「自分が想像する形と何か違う いや随分違う・・・」

地元のショップさんである程度の形を作ったZ33に乗ってきたN氏は少し困惑した様子で話し始めてくれました。話を聞きながら車の仕様の確認をしていると、付いているパーツはどれも高価なパーツであることには変わりないのですが、オーナーが考える用途に合っていないパーツが多く、ある意味「オーバークォリティ」過ぎて乗りにくいZ33になってしまっているようでした。
それと誰しも同じでしょうが、「好み」と言うのは変わっていきます。堅い足回りが好きだった時期もあったでしょうが、ソフトで上品な乗り味が好きになることだってあると思います。それはオーナーN氏も同じで気分よくガンガンに走る時もあるようですが、大人しく走る時だってあります。狙いを定め進めたら、今度はある程度の幅を持たせて気分よく柔軟に対応できるカスタムこそ大切なことと思います。

難しいのは高価でレベルの高いパーツパーツが元から付いているわけですから、その上をいくセットアップ術が今回は求められます。オーナーの想いと言うのを形に変えていくカスタムこそが今回のセミオーダーメイドカスタムで、実はDAYTONAが最も得意とする分野です。

現状のZ33を試走させてみると、やはり普段使うには厳しい個所もところどころあり、ピロアッパーもガタが出て異音が発生。機械式LSDも効きすぎて不快な異音や、ダンパーとのマッチングも悪い様子。さすがに乗りにくいでしょう。
ずばり課題は「街乗りからハイウェイクルーズまでストレスなく走れる車」
これもDAYTONAが最も得意とする分野かもしれません。

オーリンズDFV
ダンパーはDFVオーリンズが付いていました。使用して2年ということですので、これを機にオーバーホール及び仕様変更します。スプリングはオーリンズ純正のアイバッハから同じバネレートでもソフトに使えるハイパコへ変更、バネレートも若干見直ししました。フロントの応答性能はそのままに、特にリア周りを変更。若干ふらつき感が感じられるZ33ですのでリアの減衰力特性やバネレートを変更です。

スプリングはハイパコへ変更 ピロボールをゴムブッシュへ
そして異音が出やすいピロボールアッパーマウントからゴムブッシュアッパーへと変更。
リアのピロボールが傷むと室内に「コトコト」音が侵入してきますから嫌らしいですよね。シャープさよりも異音対策の為前後共にゴムブッシュへ変更です。

1G締め付け
そしてお決まりの1G締め付け。せっかく良いダンパーKITを装着するのですから出来る限り最適化してあげるのは当然です。この後4輪アライメント調整も行いダンパー廻りは完成。

LSD ATS カーボンLSDへ変更
そして、次なる問題の機械式LSD。以前はC社の機械式LSDでしたが、あまりにも街乗りには不向きですのでATS カーボンLSDへ交換しました。とはいえ、使用するタイヤやダンパーの仕様、そして一番大切なのはオーナーの乗り方使い方です。いくら良い部品と言えども全員にマッチングするわけではありません。大切なのはオーナーにマッチングさせることです。

ATS社に車やオーナーの情報を送り電話やメールで数回打ち合わせを行い仕様を決めていきます。例えば今回のカーボンLSD、基本仕様は2WAYですがSTDバージョンよりもプレートや皿バネの仕様変更。そしてイニシャルトルクを落として組み込んでいます。狙いはアクセルオン時で即時にLSDが働くようにレスポンスの上昇。そして中間トルク域での反応の上昇です。その為にはデイトナ独自のセッティングが必要でした。

EU日産純正のフィン付きデフカバー
熱冷却のためEU日産純正のフィン付きデフカバーへの変更

DAYTONA BIGスロットル ver.2
エンジン関係はトルクの上昇を望まれていましたので、まずはDAYTONA BIGスロットル ver.2の導入。口径は同じく62Ф仕様ですが、丸型のスロットルシャフトを断面加工して吸入抵抗を低減させました。昔で言うWEBER キャブのようなイメージですね。
それに合わせDAYTONA Sports ECMでリプログラムを行いました。元はIMPULハイパワーコントロールユニットが付いていましたが、「もう少し元気に回る仕様にしたい。しかし扱い辛いのは嫌だ」ということでしたので、ハイスロットルセッティングを少し抑えて中間トルクをあげていく方向に制御してみました。

nismo S-TUNE プラグ
各種オイルやnismo S-TUNEプラグも交換し全ての作業メニューを完成させました。

僕なりに頭を悩ませ、「どうやったらお客さんが喜んでくれるかな」と考えに考えたことでも、ユーザーさんが思う方向に向いていなかったら意味がありません。少々の違いは調整で済んでも、基本の道を間違えるわけにはいきません。
ですが、一番初めにも書きましたが、現状で素晴らしいパーツで組み上げられたZ33です。ただし、方向があっちを向いていたりこっちを向いていたり、パーツが互いに主張し合っている状況ですので、それらをオーナーが思う方向へ向かせる必要がありました。

このような仕事をやらせていただき納車した後の2、3日間はドキドキします。
どんな感想が待っているのか・・・

オーナーN氏よりメールが届きました。

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山本さん

おはようございます。Nです。
週末は色々なステージで軽く走りこんで感触を味わっていました。
たくさん感じた事はあるんですが、

1.足回り、駆動系
バネレートを高めた分コーナーでのロールが減り、LSDを2wayにしたせいかアクセルのオン、オフでの挙動の乱れがほぼなくなって全体的な安定感が抜群に上がりました。弱アンダーな感じで直安性も良いです。そして微振動が減り、強い入力の時も(バネレートが上がった分の硬さはわずかにありますが)角が取れた感じで乗り心地はむしろ改善しています。
乗り出してすぐのLSDの引きずりやバキバキ音もありません。
2.スロットル、ECU
レスポンスは丁度良い感じで、このままのデータで行きたいです。トルクも上がっており高速で6速2,000回転からでも割と加速していくため、6速キープで走れます。

一言でいうと 素晴らしい!! です。
N関~K水IC間を何の不安もなくアッという間に駆け抜けることができました。

長々と書いてしまって申し訳ないですが、狙った方向に進んで来ているので非常に満足しています。
ありがとうございました。今後とも宜しくお願いします。
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僕とオーナーN氏の方向感がシンクロしたということで、このようなありがたいメールも頂頂戴できました。

今回のモデルファイを振り返ると、ダンパーシステムは我々が最も得意とする分野ですから、手に取るように方向性が見えてきました。
しかしながらカーボンLSDのセットは正直悩みました。普通のハイグリップラジアルタイヤを履き、若干ソフト路線に振ったDFVオーリンズにマッチングさせるLSDというのを悩みました。当初は今月初旬に発売されたばかりのATS カーボンLSD タイプSTREETも視野に入れていましたが、ラフに使ってもタレの心配のないカーボンLSDをチョイスし効きを弱めながらも、作動ポイントの改善を行いました。結果として雨天時など低μな場面でも確実にトラクションを確保できる素晴らしいZ33になりました。

まだまだ伸び代はありますので、今後も楽しいモディファイを提案していきたいと思います。

2010年2月26日